今さらではあるが、2017年に起きたLinux界隈のライセンス違反事件(志賀慶一氏がウェブ翻訳サービスを使ってUbuntuなどの翻訳を行っていた件)について、どういう流れだったのか簡単にまとめてみた。
2017年2月21日(火) 21:02:03 JST
志賀慶一氏がUbuntuの翻訳者向け公式メーリングリストに次のメールを投稿。
Ubuntuの翻訳はlaunchpad.netというサイト上で行われていて、アカウントを作れば参加は自由にできるが、翻訳しても翻訳を反映させられるのは権限を持つレビュアーだけ。その権限を持つレビュアーのチームであるUbuntu Japanese Teamが機能していない、と志賀慶一氏が主張。
その主張に対しUbuntu Japanese Teamの村田信人氏や吉田史氏が、ここはその話をする場所ではないと別の場所へ誘導。
2017年2月22日(水) 21:12:59 JST
吉田史氏は志賀慶一氏に、あなたは翻訳した数こそ多いが以前あわしろいくや氏が言ったように翻訳の質が充分ではない、と指摘。ついでに、Ubuntuの翻訳が認証制なのは、かつてExcite翻訳を使って「シンボリックリンク」を「象徴的結合」と訳すなどした翻訳者がいて、その修正作業が大変だったからだと説明。
2017年2月22日(水) 21:43:09 JST
志賀慶一氏、レビュアー(翻訳を反映させる権限を持つ者)を増やしてほしいと発言。ついでにウェブ翻訳の品質は向上していると主張。
2017年2月22日(水) 22:13:07 JST
吉田史氏、志賀慶一氏の主張に対し、品質だけでなくFLOSSなプロダクトではライセンス的にウェブベースの機械翻訳は使えないと指摘。
2017年2月22日(水) 22:30:56 JST
吉田史氏、志賀慶一氏に対し、「あなたウェブ翻訳使ってUbuntuの翻訳してませんよね?」と質問するも、志賀慶一氏は返答せず。
2017年2月24日(金) 21:56:24 JST
吉田史氏と志賀慶一氏のやり取りが続く中、あわしろいくや氏がメーリングリストに投稿。
We (Ubuntu Japanese Team/Ubuntu Japanese Translators) are active, because I am here! I am here!
ノリがよく分からないのだが元ネタでもあるのだろうか。
2017年2月24日(金) 22:09:42 JST
その投稿に対し、志賀慶一氏は少々失礼な投稿を行ってしまう。
Hey, AWASHIRO Ikuya!
You are the Fcitx project who refused by just looking at my name:
https://groups.google.com/forum/#!topic/fcitx-dev/U4X3GjO41xo
I do not want to see your character anymore!
BALLOON a.k.a. Fu-sen. (Keiichi SHIGA)
あわしろいくや氏はFcitxプロジェクトではないし、志賀慶一氏をFcitxプロジェクトの翻訳に参加させなかったのは志賀慶一氏の翻訳の質が低かったからで、文字主体のコミュニケーションの場であるメーリングリストで「あなたの文字はもう見たくない」というのは出入り禁止と言っているようなものである。
2017年2月24日(金) 22:31:24 JST
その志賀慶一氏の投稿をJoel Addison氏がやんわりと咎める。
2017年2月24日(金) 22:55:59 JST
志賀慶一氏、謝罪すると同時にGoogle翻訳を使ってます宣言をし、ここから去ると投稿。
2017年2月25日(土) 18:42:46 JST
吉田史氏、UbuntuやLinux Mintの翻訳でGoogle翻訳を使っているとしたらライセンス的に問題があるから止めてくれ、と投稿。
2017年2月27日(月) 21:29:27 JST
あわしろいくや氏と吉田史氏が返答を要求し、志賀慶一氏がメーリングリストに復帰。
2017年2月27日(月) 22:31:32 JST
吉田史氏、ウェブ翻訳を使用した翻訳を止めるよう呼びかける。
2017年2月27日(月) 22:43:52 JST
志賀慶一氏が謝罪を投稿。
なお志賀慶一氏、この数日前にTwitterで次のように呟いていた。
ふうせん Fu-sen.|BALLOON @balloon_vendor
う〜んとね……自分の翻訳の仕方を明かしてしまいますが、完全な未翻訳は複数の Web 翻訳で結果を見て、それをベースに個々に決まっているルール・体裁に改めて入れています。(全角・半角間のスペースとか)完全なコピペで一致するところはないと思うんですよね。
08:19 午後 - 2月 24,2017
2017年2月28日(火) 00:30:51 JST
ここからはUbuntu Japanese Teamのメーリングリストに移動したらしく吉田史氏がメールを投稿し、IRCミーティングへの参加を呼びかける。
2017年2月28日(火) 00:46:37 JST
志賀慶一氏、こちらでも謝罪。
2017年2月28日(火) 00:55:44 JST
吉田史氏、志賀慶一氏に対し、今後のために志賀慶一氏自身の手で翻訳を取り除く作業が必要だと通告。
2017年2月28日(火) 01:15:34 JST
志賀慶一氏、elementary OSの翻訳チーム管理者を辞する旨を投稿。
2017年3月2日(木) 21:45:53 JST
吉田史氏、志賀慶一氏に対し、お叱りの長文メールを投稿。
文中で5chに志賀慶一氏のスレが立っていることも触れられていた。
2017年3月2日(木) 22:38:41 JST
志賀慶一氏、吉田史氏の投稿に対し、未来がない、言葉を失った、ここは法廷ではない、と最後の投稿。
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-jp/2017-March/005699.html
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-translators/2017-March/007363.html
- https://lists.ubuntu.com/archives/ubuntu-translators/2017-March/007364.html
2017年4月
Ubuntu Budgieの管理者であるIkey Doherty氏、budgie-desktopの翻訳チームから志賀慶一氏を追放。
- https://twitter.com/ikunya/status/852926028246687744
- https://twitter.com/_hito_/status/853024080198377472
- https://twitter.com/_hito_/status/853026676984340480
2017年5月
Software Design 2017年6月号に志賀慶一氏のライセンス違反の件が掲載される。
- https://twitter.com/_hito_/status/855379244985143296
- https://gihyo.jp/magazine/SD/archive/2017/201706
Ubuntu Monthly Report 【86】Ubuntuの方針転換とWeb翻訳混入事件……あわしろいくや
2017年?月
その後、志賀慶一氏は運営していたLinux関連サイトやTwitterアカウントを全て削除した模様。
余談
2021年現在、「みんなの自動翻訳」というOSSの翻訳にも使える翻訳サービスが、LibreOfficeの翻訳で使われているらしい。
・オープンソースの翻訳は、ライセンス問題で長く自動翻訳に頼ることができませんでしたが状況は変わりました
・みんなの自動翻訳@TexTraは本当に超おすすめ
・DeepLもライセンスを購入し下訳として利用なら使えます (確認済み)
・自動翻訳の精度は上がっているけれど、出力された文章がそのまま使える状態は、まだ難しい
・残念ですが、まだまだ人間の翻訳は必要です
・自動化を進めて手間を減らしドキュメント自体の質を向上させたい